作家名

写真  彼女はプロだ。顧客というかファンをたくさん獲得している。東京の代官山にあるショップでは、彼女の絵を求めて、若者たちが集まってくる。カッコいい!を連発する。障害と無縁な若者たちが、彼女の絵そのものに魅せられ、「この絵を描いた作家に会いたい」と工房絵へやってくる。訪れた若者が、「絵を見せて下さい」と頼むと、彼女は「絵を見せて下さい」と繰り返してファイルを差し出し、また、黙々と絵を描き続ける。そんな彼女のそばにしばらく寄り添った若者たちは、目を輝かせ、ホクホク顔になって帰っていく。普段は福祉にまるで興味のない若者たちが、言葉ではなく、彼女の絵を媒介にしてつながっていく。好きな作家がたまたま自閉症だったことにより、それまで抱いていた障害に対するイメージが根底からひっくり返る。そのリアリティーが、誤解や偏見を取り払っていく。彼女とファンの出会いは、とても自然で心地よい。早い話が、嘘っぽくない。

 彼女は、例えば動物図鑑等を見て絵を描く。描かれた動物たちは、図鑑の中のそれとはまったく異なった色や形をしている。私たち俗人では考えもつかない色の組み合わせで、新しい動物が次々に誕生していく。そのどれもが、みな違う。ひとつとして同じ配色の絵がない。きっと色の組み合わせを楽しんでいるのだろうが、楽しみ方のレベルが違う。移り気な私たちには、どうあがいても到達できない境地だ。彼女が好んで描く裸婦だって、俗人の感性ではとても描けない。画材がきちんと並べられた机に向かい、丁寧な色分けをひとり静かにしている彼女からは、私たちを圧する風格が漂ってくる。

 すでに1,000点以上の作品ストックがある彼女は、誰が見ても作家だ。彼女の創作活動は、授産施設の枠をとっくに越えている。ひとりのアーティストとして独立すべきだと、工房絵では真剣に考えている。とてもすばらしい考えだ。

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