映画 日本国憲法
映画 日本国憲法
 
TOPへ
この映画について
上映スケジュール
監督紹介
出演者紹介
音楽紹介
書籍紹介
上映してみませんか
映画へのメッセージ
イベント情報
シンポジウム
昨年の12月10日に御茶ノ水の全電通ホールで、『映画 日本国憲法』の上映会と、映画の出演者をお呼びしてのシンポジウムを開催しました。
当日は第1部で大田昌秀さん(元沖縄県知事、参議院議員)の講演、第2部では韓洪九さん(韓国の歴史家)、班忠義さん(中国の作家・映画監督)、ジャン・ユンカーマン監督、そして大田昌秀さんにも引き続き参加いただいてのシンポジウムを開催しました。
以下に、第2部シンポジウムの全文を掲載いたします。
2005・12・10 シンポジウム全文
司会(山上徹二郎)
 シンポジウムを始めさせていただきたいと思います。
 司会進行を務めさせていただきます山上と申します。今日ご覧いただきました「映画 日本国憲法」の製作をやらせていただきました。それではゲストの皆さんをご紹介いたします。
まず監督のジャン・ユンカーマンさん、お願いいたします。(拍手)
それから韓国からお招きいたしました韓洪九(ハン・ホング)先生、お願いいたします。(拍手)
それから通訳のベ・ヨンミさん、よろしくお願いいたします。(拍手)
それから班忠義(バン・チュンイ)さん。中国から来ていただきました。(拍手)
それから1部に引き続き大田昌秀先生にもお残りいただいております。
大田先生よろしくお願いいたします。(拍手)

 本日は師走のお忙しいなかにたくさんお集まりいただきまして大変ありがとうございます。今日上映させていただきました映画は今年の4月23日に完成記念の上映会をやりまして、いまだ全国の各地で上映会が続いております。映画は出来たわけですけれども私たちが直面している今の日本の現状を見ますと、これからが本当に正念場ではないかという考えがありまして、あらためて年を越す前にもう一度この映画を見ていただきながら「私たちに何ができるのか、何をすべきなのか」というテーマで語り合っていきたいということで企画をさせていただきました。とくに今日は「アジアから見た日本国憲法」という大きなテーマで進めさせていただきます。そのような視点から、今回は韓国と中国からお二人をお招きいたしました。
 大田先生には同じアジアからの視点ということで、沖縄から日本国憲法をどのように捉えておられるかというお話をうかがいたいというのが、今日の私どもの意図でございました。

 簡単にご説明いたしますと、韓洪九先生は現在、聖公会(ソンゴンフェ)大学の助教授をされておりまして、同大学の人権平和センターの所長もなさっておられます。
 班忠義さんは映画監督、また作家ということでもありますけれども、1987年に日本に留学をされまして、上智大学の大学院で研究をされておられました。そういうことで今日は日本語で話をしていただきます。中国人に対する旧日本軍による性被害の問題をずっと長年のテーマとして追いかけておられます。
映画も2本製作されています。
 大田先生は先ほどご紹介をさせていただきましたので省かせていただきます。
 ではお話を進めさせていただきたいと思います。まずそれぞれの方に、短く最初に自己紹介をかねてお話をいただきたいと思いますけれども、中国あるいは韓国では今どのような日本国憲法に対する動きがあるのかないのか、あるいは反日というふうなことが大変大きく日本では報道されておりますが、それぞれの状況をまずお話しいただけたらと思います。では韓洪九さんからお願いいたします。
韓洪九
 こんな貴重な場にお招きいただきましてありがとうございます。私は現在、韓国で韓国現代史を専攻している韓洪九と申します。また平和運動にも携わっております。
 ベトナム戦争における韓国軍による民間人虐殺の歴史を糾明する運動「ベトナム戦真実委員会」。良心によって韓国軍の兵役を拒否する運動。平和博物館をつくる運動。そして過去軍事独裁政権の元で中央情報部というのがあったんですけれども、国情院(国家情報院)と略して言いますが、そこが国民に対してテロや拷問を行なった事実を糾明して、それから未来に向かって行こうとする運動。具体的に申しますと、これらに携わっております。

 いま日本では平和憲法が改悪されるのではないかとしてとても心配な声が高くなっていますが、正直に申しあげて韓国においては日本の平和憲法が持つ重要な意味がそれほど十分に伝わっているわけではありません。しかし歴史教科書問題や靖国神社参拝問題、そして日本軍慰安婦のことはとても広く知られていて、とくに2005年に入ってからは竹島=独島問題までありましたので、日本に対する感情はあまり良くないのが現実です。そして日本国内における右傾化に対する心配の声も高まっています。しかし韓国のこういった反応を見て少し心配になることは日本の右傾化に対応して、こういう危ない時だからこそ、日本の市民と韓国の市民が連帯して日本の右傾化を防ぐべき時だと思いますが、どうも韓国はまだ無条件に、とにかく日本は悪いんだという認識が非常に強いということが心配です。もちろん日本の一部の右翼が日本の右傾化、靖国参拝などを煽り、日本の侵略戦争や侵略に関する歴史を正当化することに対しては非難すべきだと思いますが、しかし日本人みんながそういうふうに思っていると韓国人に思われるのも、それもまた危険だと思います。

 ソウルに行くと西大門刑務所歴史館というのがあります。西大門刑務所というのは植民地期に日本が建てたとても大きな刑務所です。そこにいま歴史館が建てられているわけですが、当時、多くの朝鮮人独立運動家が逮捕されたり、拷問を受けたり虐殺されたりした現場です。そういった歴史的な現場に私は学生を連れて一緒に訪れているわけですが、そこは当時、日本帝国主義が韓国の独立運動家を拷問した現場ですが、もう一方、意味を持つのは、解放後の韓国における親日派政権、国家政権が当時の民主的人士や統一を求めるような人たちをまた同じように逮捕したり、拷問したり虐殺したりした歴史的現場でもあります。
 そこに毎年私は学生を連れて行っているわけですが、今年に入ってから竹島=独島問題や教科書問題が浮かび上がったあとに、おそらく小学校5〜6年、あるいは中学校1〜2年生くらいの子どもたちが書いたと思われる、とても口に出すことができないほどひどい日本に対する批判の声、悪口が書かれているんです。こういう時だからこそ日韓の民間人交流が深まって、相互の理解が深まるべきだと思いますが、どうも今のように日本と韓国というような国家と国家の対抗の構造になってしまうと、むしろ国家主義や民族主義によって日韓の民間人、市民たちが分裂させられるような結果を生むのではないかと心配しています。

 日本の憲法に関しては、今年11月3日、日本国憲法を公布した日にあわせて日韓の市民団体が共同で韓国でシンポジウムを開きました。日本の平和憲法改悪の動きと日韓市民社会の課題というテーマで、韓国の20以上の市民団体が参加しました。そうしたシンポジウムが開かれている状況ではありますが、先ほど言いましたように韓国の市民運動や平和運動で日本の憲法を十分に理解して、それに対して十分な行動に出ているとはまだ言い切れない状態です。ですから、これから韓国の市民社会においても日本の平和憲法の意味を十分に生かして日本の右傾化を防ぐ、それこそが東アジア全体の平和や安定のためにきわめて重要だということをより強く自覚して、私もこれから活動していきたいと思います。
次へ→
 
画 / 奈良美智「Missing in Action -Girl meets Boy-」(広島市現代美術館所蔵)
DVD・ビデオ販売
掲示板
予告編
English
    ページのトップへ
   
  Copyright (C) , SIGLO Ltd. All rights reserved.SIGLO