映画 日本国憲法
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司会(山上)
 どうもありがとうございました。
 残り時間がちょっともう過ぎているんですが、班忠義さんと大田さん、短くお願いしたいんですが。では班忠義さんから。
班忠義
 中国脅威論を日本でよく聞いていますけれども、中国人としてどういうふうに見ているかそれを言いたいです。中国人は日本人にそう言われるとすごく抵抗感がありますね。なぜかと言うと、自分は国の予算の20パーセントの膨大な軍備をしているアメリカの戦車に走り回られながら威張られて、戦車を作っている途中の中国の軍備を指摘するのが不平等というような、そういうような気が強くしますね。
 つまり日本は公正じゃない、アメリカの膨大な脅威の国から中国を指摘するのは間違いだということですね。もうひとつは、私が思うのは軍備増大は、結局人間の心の問題ですね。中国の軍備を解決するには、軍備に反対する声を高めなければならないですね。それは何なのか、それはひとつ、民主主義の実現ですね。民主主義はいまいろいろ問題があるけれども、やっぱり避けて通れないことですね。

 さっきは韓先生がとても韓国の民主主義はとてもまだまだと、とても謙虚と思うんですね。中国から見れば韓国の民主主義はうらやましいですね。そうすると、もうひとつ、日本は日中関係を見る時、長いビジョンで見なければならないですね。民族主義は百害があり一利もないですね。つまり中国と日本の100年の歴史を見れば、1920年代、中国は国民党と共産党、みんな民主主義が高まった時に日本の民族主義が山東半島に21ヵ条をかけて、あと31年(満州事変)戦争にかけたんですね。そうすると、すぐその中国の民族主義が高まってきたんですね。民主主義の基礎もできなかったんですね。それですぐ戦争に巻き込まれて共産党政権になってきたんですね。
 例えば1989年中国の民主化運動が高まったときに天安門事件があって弾圧された。そうすると欧米がみんな中国を制裁して民主主義の理念をもって中国に対応しているのに、日本は自分の国のことばかりを考えて、中国が内乱したら日本は大変だと、すぐ日本の外交は、海部元総理が中国に行って、天皇の中国訪問と、歴史問題とか何も解決しないで単なる中国訪問そのものになってしまったんですね。

 今の中国の内政はすごく大変な時期になってきましたね。腐敗とか環境破壊、共産党政権一党支配はほんとにぎりぎりのところに来たのに、日本はまたそういうような、軍備増強すると憲法改正して中国と日本がこういうふうになって、また愛国主義教育、そうするとまた中国の民主主義は最後の最後になって……。そうすると、中国の民主主義が解決しないと、ビルマとか北朝鮮、すべてアジアが逆戻りになるんですね。
 日本の役割はアジアのリーダーシップをとる場合に長いビジョンで、国を越えてアジアを考えなければならないと思いますね。

 それで、いま9条は何なのかと思うと、世界で日本社会はいちばん安全と言われていますね。なぜかというと銃がないですね。日本は銃のない社会という誇りを持っていますけれど、なぜもっとこの銃のない社会を世界に広げないんですか。銃のない社会を自分は今までやってきたんですね。9条が守られて、軍隊をつくらないという、そういう世界で模範的な存在になってきたんですね。そうすると、自分が銃を持っていたら、必ず相手も銃を持ちたがるんですね。こういうような日本の憲法、日本一国の憲法ではなくて、作成するとき、いろいろヨーロッパ、フランスという優秀な憲法を参考にして、人類から、神様から、ほんとうに日本にプレゼントしたんですね。そのような貴重な憲法は世界に還元しなければならないのに、自分から棄てようとしていますね。
 私が思うのは、日本の憲法を守るのは日本だけのことじゃなくて、私たちアジア全体のことですね。つまり日本の憲法が守られれば、アジア全体の平和、世界平和につながるんですね。まあ、いいことを堅持するのは大変ですけれども、今そのジレンマになってきたときじゃないかと思いますね。
 皆さんがんばりましょう。(拍手)
司会(山上)
 ありがとうございました。
 ほんとに時間が押しておりますが、ひと言お願いします。
大田昌秀
 ひと言だけ、まあ2点だけ申し上げたいと思います。
 ひとつは、国民保護法制というのができて、来年までに地方自治体は具体的に有事の際、つまり戦争の際に、どういうふうに非戦闘員を避難させるかということの計画を出せ、というような格好になっているわけですが、実際に戦争になった場合にそういう法律が効果を持つかというと、私は非常に疑問に思っております。第一、県庁に対して政府がこういうことを教育を求めるということをやるわけですね。ところがこの間の沖縄戦で、まず県知事が米軍が上陸する前に本土に逃げ帰っちゃった。それから県庁の部長クラスが4〜5名くらいおるけれども、そのうちの警察部長だけが残って、あとは全部また本土に逃げ帰ってしまってですね、沖縄県庁の機能がまったく崩壊して、消えた沖縄県と言われたわけですね。そういうふうに実際に戦場になるとほとんど役立たないということですね。
 それから、たとえば戦前、日本には原子力発電所がなかったわけですけれども、いまは全国に52か所ありますね。ほんとうに戦争になった場合にどこにどうして逃げるんですかねえ。県知事がいくら頑張ったって、政府がいくら頑張ったって、万が一この原子力発電所を攻撃されて10か所くらい命中したとしたら、いったいどういうふうにしてどこに、周辺は海ですから、どうして逃げるかという問題、これはもっと真剣に考えたいと思います。

 それから、あとひとつ、私がいちばん心配している問題があります。これは皆さんと直接関係がありますが、徴兵令ですね。憲法が変わったら完全に徴兵令が敷かれると思います。すでに徴兵制が国を救うとか、あるいは戦争を知らない若い国会議員たちは徴兵令は憲法に違反しないということを公然と主張しております。
 日本がこの間無条件降伏をした時に日本の国内に434万人の軍隊が残っていた。数字は人によって若干違いますが、国外に355万人。あわせて800万近い軍隊が残っていたわけですね。そして広島、長崎に原爆が落とされて、ソ連が参戦して、無条件降伏せざるをえなかったわけですね。
 いま自衛隊26万足らずなんですね。そうすると、もし有事の場合に必ずこれは人が足らないということで法律ができて、そして引っ張られていく。二十歳になったら皆さんのお子さんとか兄弟とかというのはもう否応なしに引っ張られる。
若い人たちは大人は馬鹿だ、そういう時には逃げればいいんだと言うんですが、逃げたら死刑ですよ。そういう問題があるということをぜひご理解いただきたいと思います。終わります。(拍手)
司会(山上)
 ありがとうございました。1部2部を通して長時間のご参加ありがとうございました。今日おいでいただいた、韓洪九さん、班忠義さん、お礼申し上げます。大田昌秀さん、お忙しい時間の中ありがとうございました。ジャン・ユンカーマンさんもありがとうございました。
 本来であればきちんとしたまとめをするべきかもしれませんが、私自身の感想で終わらせていただきたいと思うんですけれども。
 韓さん、あるいは班さんのお話、また大田さんのお話を伺ってますと、寛容であってそして協調性を求めておられる、そういうアジアの眼があったというふうに思います。そのことに対して、本当であれば私たちはただ単に憲法9条を守るというふうな立場だけではなくて、やはり歴史認識の問題をもう一度きちっと再教育をする、我々自身が認識する必要があるということを、今日非常に強く感じました。
 寛容とか協調という言葉に対応する言葉、それを私たちがもし日本人として口にすることができるとすれば、やはり謝罪と反省ということが先にあるべきだというふうに思います。
 これはけっして後ろ向きの問題ではなくて、もう一度しっかりと歴史を認識するという教育を、大人である私たち自身も自らに課す。そして初めて、寛容と協調ということがアジアのなかに生まれてくるんだというふうに思いたいと思います。そこから、やはり9条を守るということが初めて前向きな運動になるのではないかという認識で締めくくらせていただきたいと思います。
 最後まで長時間ありがとうございました。(拍手)
 それからもうひとつ、大変長時間通訳をやっていただきましたベ・ヨンミさん、韓国の留学生で一橋大学の大学院で朝鮮近代史をやっておられます。本来であれば、この壇上に半分くらいは女性の方が並ぶべきだったのではないかと思います。
ありがとうございました。(拍手)
どうもありがとうございました。(拍手)
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画 / 奈良美智「Missing in Action -Girl meets Boy-」(広島市現代美術館所蔵)
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