映画 日本国憲法
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ジャン・ユンカーマン
 今の班さんと韓さんの話を聴いていてあらためて思ったのは、やはり戦争が残した傷痕がなかなか治らないものなのだということで、それはほんとに深いところまで残る。社会的に精神的に個人的にいろいろな形で深い歪みが入ってくるということなんで、戦争が終わって敗北に終わって勝利に終わって、終わるもんじゃないんですね。ずっと続くものではあると思うんです。
 僕の国のアメリカがそういう戦争を次から次にやっているので、前の戦争が片づかないうちにまた戦争をやっているということなんですけど、イラクでイラク人が、3万人か5万人か、多くは10万人も亡くなっているんだけれど、そのイラクの家族のひとつひとつがその被害を受けてまたそれを報復する伝統もあるので、そのなかでテロの勢力が生まれてくるということで、また続くということが今のイラク戦争の現実だということがよく見えていると僕は思うんです。
 もうひとつ、このあいだ数字を聞いたんだけれど、イラク戦争で戦っているアメリカ兵のなかでは5万人くらいが精神病を抱えてアメリカに帰ってくるんだって。これは戦争疲労というような言葉を使うんですけれど、battle fatigueという、なんかあいまいな言葉なんだけど精神病なんですね。
 だから目的がはっきりしていないところで戦争をやっていて、どこかから攻撃がくるということは、やっぱり精神的に狂うんだろうと僕は思うし、あと精神的にああいう形で狂わなくても、逆に戦って人を殺して帰ってくる人だって、それはまた変な現象が残るんじゃないかなと僕は思うんです。
 まあそういうことがいまの世の中にも続いているし、60年前に終わった戦争中に多くに起こったことなんだから、そういうことを忘れてはいけないし、やっぱりそれを直視していかないとだめだと思う。

 今のアジアのなかで中国が強くなってきている。軍隊を拡大している。だから脅威なんだ。北朝鮮は何をやるか全然わからない。核兵器を持っているかもしれない。それを日本に落とすかもしれないから、日本には強い軍隊がないとだめだということを言ってくるんですけれど、実際にそういう脅威があれば、その脅威が実現しないように努力しなければいけないというのがあたり前のことだと思うんだけど、でもそういうことは日本の政府はいまちっともそういう努力を示していないんです。
 アメリカの政府だってそうなんです。なぜかということを考える必要があると思うんですけど、それはやっぱり指導者のなかではそういうような摩擦、そういうような対立がためになっているのね。それを利用しているということなんで、どんどん愛国心を煽って、自分への支持を強くしていくということで、得するのは軍需産業と政府の権力者だけなんですね。一般の市民が得するところは何もないんですよ。こっちがわも相手がわでも一般の人たちが損するばかりなのだけど。でもどこかで誰かが得していないとそういうことは起こらないということなのだから。

 いま韓国の南北の調和のなかでいちばん邪魔をしているのがアメリカなんですよね。朝鮮半島が平和になって、またアジアの中で平和的な関係ができるとアメリカの政府、権力者がそれで損すると読んでるから、邪魔しているんです。で、それが脅威だ、中国が脅威だ、台湾に攻撃するかもしれないと、いろいろなことを言ってきて、そのままその状況を保つようにやっているということだと思う。だからそういう意味で、政府にそういう平和的なアジアをつくってもらおうということは、あんまり期待できないんじゃないかという気がするんですよ。だとすれば、どうやればいいかということがあると思うんです。
 もちろんひとつはこの平和憲法を守るということがあると思う。平和憲法、その日本の憲法は、やっぱり戦争が終わった時に、さっき言ったように戦争の傷痕が深いものだということをよく理解して作ったものだと思うので、日本のふつうの市民がそういう意味ではすごく歓迎した。
 そういうことを理解したことによって60年間も守ってきた憲法だと僕は思うんです。でも憲法を守るということだけで終わっちゃうと、いまの状況が変わらない、今の憲法を守るなかでも韓国、中国との摩擦がまだ残っているということなんだから。僕はよく、いい加減かもしれないんだけど、いろんなところで憲法を守るということは保守的であって、もっと積極的に何かを一緒に頑張って作らないかということなんだと思う。
 とくに若い人たちに憲法を守るということと戦争の被害を思い出せというようなことを言うと、何か遠い距離を感じるんですけれど、でもやっぱり、これからのアジアを考えるなかでは何かを目的をもって積極的に作っていくというような運動を起こせないのかなあと思うんです。これは政府が起こすとは思えない。だから市民、ふつうの人たちが起こすしかないと思う。

 この映画のなかで班さんがとてもきれいな言葉で「平和憲法は宝物だ」と。あちこちで映画を見せたときに、その言葉をまた書いてくるんですよ。やっぱり宝物だということで守らなければいけないと。もうひとつ書いてくる言葉が韓洪九さんが映画のなかで言う言葉なんですけれど、「韓国でも日本でも同じ問題に直面している。これからの若い人たちにどうやって平和的な感受性を育ててゆくか」といことで、僕はあのインタビューしたとき、韓さんと話していた時に、あれを聞いてすごく嬉しかった。というのは、日本を攻撃するということじゃなくて、これからのアジアを考えるなかで、韓国と日本の考え方とか、何を目指しているかということが分かれているわけではないんです。一緒なんです。同じなんです。
 中国のことでも言えると思うんですけど、これからのアジアを考えるなかではアジアのみんなのための、平和的なアジアの地域を作っていくということをこれからはいろんな国境、国を越えて手をつないでいって、そういうような積極的な運動を起こしていかないとだめじゃないかなという気がしますね。まあ、それは楽観的かもしれないんだけど、将来に向かって新しいそういう関係を作っていくのがこれからの僕たちの責任じゃないかなと思います。(拍手)
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画 / 奈良美智「Missing in Action -Girl meets Boy-」(広島市現代美術館所蔵)
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