79歳になる農夫のチェ爺さんには30年もともに働いてきた牛がいる。
牛の寿命は15年ほどなのに、この牛は40年も生きている。
今では誰もが耕作機械を使うのに、頑固なお爺さんは牛と働きつづける。
牛が食べる草が毒になるからと畑に農薬をまくこともしない。
そんなお爺さんに長年連れ添ってきたお婆さんは不平不満がつきない。
しかしある日かかりつけの獣医がこの牛はそろそろ寿命だ。
今年の冬は越せないだろうと告げる。
チェ爺さんは牛市場で新しい雌牛を買った。
年寄りに2頭の牛の世話は無理だ。
お婆さんは老いぼれ牛を売れと言う。
死ぬまで面倒みるさ お爺さんは答える。
こいつは動物だがわしには人間よりも大切だ。
若い牛が雌の仔牛を産んだ。お婆さんはがっかり。
雌の仔牛はお金にならない。
お爺さんは相変わらず黙々と牛のために夜明けからエサをつくる。
お爺さんは頭が痛いと時折つぶやくようになった。
働くのを控えなさいと医師はお爺さんに忠告する。
医師の忠告にもかかわらずお爺さんは働きつづける。
休むのは死んでからだ。
鎌で刈るのは老いた夫婦には大変な苦労だ。
近所の人がトラクターで稲刈りの手伝いに来てくれた。
機械でやると米がいくらか無駄になるとお爺さんは言い張るが
どこか寂しそうだ。
お婆さんは子供達に米を送る。
米を作れるのも今年が最後だろう。