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北東アジアのGDPはアメリカのGDPに比べはるかに高く、成長率も高くなっています。アメリカは北東アジアの統合を懸念しています。その只中に北朝鮮問題があります。ヨーロッパでも同じような問題が発生しつつあります。「古いヨーロッパ」〜フランスもドイツもいらない〜発言がありますが、これが反映しているのは、第二次大戦終結時に遡ることができる恐れ、つまりヨーロッパが独自の路線を行くのではないかという恐れです。もしそうなった場合、主導権を持つのはヨーロッパの工業・金融の中心、つまりドイツとフランスです。
フランスとドイツが手ひどく非難されたのは、両政府がワシントンの言うなりにならず、自国民の大多数と立場を共にしたからです。事実、民主主義に対する憎悪の表明をこの数ヶ月ほど強く感じたことは私の知る限りこれまでにありません。褒め称えられた諸国「新しいヨーロッパ」では、「古いヨーロッパ」以上に国民が戦争に反対していました。しかし、それらの国の指導者は、テキサス州クローフォード(ブッシュ私邸)からの命令に従ったため、悪人にされなかった。アメリカの言いなりになったので民主的であると認証はされましたが、彼らは自国民の8、9割を無視していました。
過去にこれほどまでの民主主義への憎悪が表明されたことがかつてあったでしょうか。私は知りません。他の諸国は単にアメリカの命令に従わなかっただけでなく独自路線をとる恐れがあったのです。30年前の1973年はヨーロッパ統合を祝って「ヨーロッパ年」と呼ばれました。キシンジャーが重要な演説をしました。今の状況と非常に関連があるので目を通すことをおすすめします。それは「ヨーロッパ年演説」で、ヨーロッパの人々への警告になっています。経済的にヨーロッパは力をつけてきてはいるが、アメリカが運営する秩序の全体的な枠組みの中の地域的責任を持つだけであることを認識すべきであるという内容です。北東アジアも同様です。地域的責任は果たしてもらうが、それ以外のことには釘をさす。(世界)秩序の全体的な枠組みはアメリカがコントロールするということですね。
しかし、ヨーロッパや北東アジアを確実にコントロールすることができるとは限りません。アジアは統合に向かっています。ASEANプラス3〜東南アジア諸国とその北に位置する工業大国3ヶ国ですね〜も独自路線をとりつつあります。もっと長い目で歴史を見ると、これは驚くべきことではありません。数百年遡ると、世界の商業および工業の中心は南および東アジアでした〜インドと中国ですね。アジアは再建しつつあります。これをアメリカがおもしろく思うはずがありません。
例えば、もし北東アジアがエネルギー資源の面で統合したとします。シベリアからパイプラインが中国そして日本へ、ことによると北朝鮮を通って韓国へ延びたとします。すると中東の石油への依存度がかなり低くなります。アメリカは世界を支配するリーダーとして中東の石油を制圧したいと思っています。中東の石油が必要というわけではなく〜恐らく必要ないでしょう〜、コントロールしなければならないのです。
50年前にアメリカ政府の立案者、ジョージ・ケナンが、中東の石油をコントロールすれば、日本の可能性〜当時は、工業化と軍備〜に対する“拒否権行使力”になる、と発言しました。本気にはされませんでしたが、あり得る事です。中東の石油と航路の制圧は、地域の諸国に対してアメリカが多大なコントロールを持つことにつながります。しかし、それら諸国が統合して資源を基盤とする工業発展をとげてしまうとそうは行きません。この兆しは見えています。ヨーロッパも同様です。つまり、単にアメリカ国民をコントロールするという問題ではないのです。しかし、世界をコントロールするのは容易いことではありません。
アメリカの軍事支出は他の諸国の軍事支出を合計した額にほぼ近いことは確かです。技術的にもはるかに進んでいます。軍事面では他の追従を許しません。しかし、これだけがすべてでないことは言うまでもありません。 |
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ある意味では、北朝鮮で一触即発状態の問題があるのはアメリカにとっては有利なことなのでしょうか。 |
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複雑な問題ですね。現政権の政策は非常に際立っています。曲がりなりにもクリントン政権はある種の外交決着に向かっていました。遅々としてはいましたが、1994年に枠組み合意には達しました。両サイドとも遵守しませんでしたが、締結したことは確かです。そこには幾ばくかの可能性もありました。
ブッシュ政権になるとすぐにそれを廃棄し、対決の方向に進んでいます。この地域の諸国が外交的な交渉による解決を目指したいと望んでいることは秘密でも何でもなく、そのチャンスもあります。北朝鮮はかなり無茶なところですが、安全保障と引き換えに非常に脅威的な軍事開発の削減をしてもいいとかなり明確にしています。北朝鮮が求めていることはそれほど無茶なことではありません。アメリカの北朝鮮不可侵への同意と経済援助。これは理解できます。北朝鮮を健全にゆっくりこの地域に統合する一つの道かもしれません。国内に変化が起きることで政治的経済的開国の方向へ進む。長い道のりかも知れませんが、そうなるべきでしょう。
これとは別の道はかなり恐ろしい様相をもっています。著名なアジア問題専門家のセリグ・ハリソンが議長を務めたタスクフォースが「破滅への道」という報告書をつい最近出版しました。これによると対決政策は破滅への道であるとしています。大惨事を招くと。それより外交的経済的イニシアチブ、太陽政策は全く見込みがないわけではなく、可能性はあるのですから、そちらの方向へ推進されるべきでしょう。
この点では、アメリカが地域の諸国と違う立場をとっていることは注目に値します。全く違うわけではありませんが同じではありません。アメリカのとっている立場の背景には、平和的な外交的解決が実現すると、地域の統合に拍車がかかるのではないかという懸念があるのではないでしょうか。北朝鮮は地政学的にはそれほど重要ではありません。しかし全く重要でないということでもありません。天然ガスパイプラインやシベリア横断鉄道が北朝鮮を通って韓国に延びるということになれば、資源基盤と工業設備を結びつけ、地域のより一層の統合へまた一歩進みます。現在のアメリカはその展望を喜ばしいこととは思っていないでしょう。これまでにパイプラインについて不満を声に出してきたのと同じことです。 |
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