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ある意味では、そのプロセスへの妨害が北朝鮮を追いつめているということでしょうか。北朝鮮が望むと望まないにかかわらず、核兵器開発に追い込んでいるのでしょうか。 |
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そうですね。そうなっています。意識的に意図されているかどうかはわかりません。内部の計画立案会議はカメラ中継で公開されているわけではありませんから。しかし、そういう風に見えますね。これは危険だということで、内部では討論があると思います。一方で、統合方向に進むままにしておくのも危険。ということで選択を迫られているのです。ヨーロッパについても長年にわたって同じ問題がありました。キッシンジャーの宣言は藪から棒に出たのではありません。かなり以前にまで遡ります。
ヨーロッパの統一についてアメリカは常にかなり曖昧な態度をとってきました。一方でヨーロッパは巨大な市場ですから統一を好意的にとらえていました。現代の多国籍産業や企業の基盤となるのはヨーロッパの市場ですから。アメリカの多国籍企業はヨーロッパ統合で繁栄したようなものですから統合には多いに好意的です。
その反面、心配でもあるのです。キッシンジャーがあげた理由がそうですね。彼に始まったことではありません。新しいとか古いヨーロッパに関するヒステリーは、大部分がこうしたものを反映しています。フランスとドイツの「反抗」そのものよりも、両国がアメリカの命令に従わなかった姿勢を大いなる脅威ととらえたのです。次は何をするかわからない。このこともあって、アメリカは東欧諸国のEUやNATOへの加入に非常な関心を示しているのです。これらの諸国は、ヨーロッパの古い中枢諸国よりもアメリカの要求を受け入れる可能性が高いと考えられるからです。これは恐らく正しいでしょう。アメリカ権力が介入するためのトロイの木馬のようなものですね。
そして、アメリカが毛嫌いしているヨーロッパの社会的市場(社会的責任をともなった市場)を弱体化することにも役立つことが期待されている。これら諸国は低賃金労働力の供給源〜ヨーロッパ版メキシコといったところでしょうか〜であり、ヨーロッパのより進歩的な社会市場システムの構造を弱体化しかねません。これらのことはつながっていて事情は複雑ですね。
その間に、アメリカは中央ヨーロッパの軍事基地体制を中東や中央アジアに転換しつつあります。基地をドイツからブルガリアやルーマニアへ移動しています。アフガニスタン侵攻がもたらしたもの、これはアメリカからの観点ですが、それは中央アジアにおける強力な軍事的地位でしょう。これはいわゆる資源支配をめぐる「大いなるゲーム」においてアメリカの企業にとっては好都合ですね。それよりも重大なことは、より重要なペルシア湾という世界最大のエネルギー(供給)システムを囲うことにつながることです。
沖縄とグアムからアゾレス諸島にまで展開しているアメリカの軍事基地体制の焦点は中東であると言ってよいでしょう。中央ヨーロッパの基地もそうです。それが今もっと中東に狭まってきているのです。アフガニスタン戦争までは、アメリカにとっての確固としたペルシア湾岸近くの軍事基地は一つだけでした。英領ディエゴガルシア島ですね。島民は島から強制退去させられていました。英国の裁判所は島民を帰還させるよう命令しましたが、アメリカは拒絶しました。軍事基地とはいっても大海の真中にあるちっぽけな基地です。今は中央アジアのアフガニスタンに軍事基地があります。遠からずしてイラクと、そして東欧にも周囲を固める基地ができるでしょう。ますます世界の戦略的支配に重大な意味を持つこの地域に基地の配置が狭まってきました。 |
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韓国沖縄からも前線方面へ移動していますね。 |
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韓国の状況は興味深いですよ。些か不気味という感じです。アメリカの北朝鮮攻撃を抑止しているのは核兵器ではないのです。非武装地帯にそってソウルや駐留アメリカ軍に照準を当てて集中配置されている砲台です。これが抑止力になっている。ところでアメリカ軍が南の方へ撤退しているというのです。これは南北朝鮮だけでなくこの地域に多くの憶測を呼んでいます。つまり、米軍兵士を砲弾の射程範囲から出してから北朝鮮に攻撃をしかける前兆なのではないかというのですね。かなりシニカルな見方で私は信じませんが、懸念材料にはなっていますね。
勿論、米国防省では、非武装地帯の北側の砲台を破壊するための精密誘導兵器などに懸命に取り組んでいることは確かでしょう。それが実現すると、北朝鮮は無防備になってしまいます。北朝鮮は核兵器で武装していません。
昨年12月にギャラップ社による国際世論調査が行なわれました。世界各国で行なわれたイラク情勢についての世論調査ですが、中心となった質問は、「国連の承認のないアメリカおよびその同盟国によるイラク攻撃を支持しますか」でした。ここで同盟国とは、イギリスです。従って、この質問は実際には、「国連の承認のない米英によるイラク攻撃を支持しますか」というもので、米英は実際に実行したわけです。この質問に対して最も高い支持率だったのはルーマニアの11%だったと思います。大部分の国で支持率は非常に低かったのです。「国連の承認を得て」という質問に対してもかなり低かったのです。国連の承認のないままの攻撃、実際にそうだったわけですが、についてはほとんど支持はなかった。これはアメリカでは報道されませんでした。
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