乗船してはじめて、鯨の捕獲がある。キャッチャーボートから鯨を受け取り、計測などの調査が始まる。私たちはキャメラも持たず、調査の現場を見ることに専念。やがて、解体に移るが、並行して胃の内容物、耳垢栓(耳あか)や卵巣などの標本採取も行われている。
スタッフの奥井が録音をはじめるものの、飛びかう包丁に恐れをなして腰が引けている。これを見かねた山崎製造次長がマイクを奪い、大包丁のようにマイクを振り回す。マイクの先端は解剖長の刃先と並んで、鯨の体を縦横無尽に駆けめぐる。にこにこしている奥井。
鯨の解体を見るのは、初めてだったが、気持ち悪いどころか、肉を無駄にしないよう、さばく技術が素晴らしい。鯨は捨てるところがないといった利用価値が育んだものかもしれないが、彼らの包丁さばきに、心から感動する。彼らの仕事を見ていくうちに、生きものを殺して食べるという大事なファクターがここにあることを確信する。
| |